2024年7月– date –
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爾朱栄 北魏の秩序維持とその崩壊
五胡末から南北朝と長期に渡って存在感を示した北魏、爾朱栄がその転機になったことは間違いない。以前から魏書爾朱栄伝に興味はあったが、今回読んでみることにした。ただし、北斉期編纂の魏書は、正史でありながら多くの曲筆が指摘され「穢史」とも呼ばれるいわくつきの書である。魏書を読む際は、常に北斉政権・編者魏収によるフィルターを意識する必要がある。唐代成立の北史にも爾朱栄の列伝があるため、魏書に準拠して記載しながら、食い違う所は適宜追記する。 爾朱栄伝 (魏書 巻74列伝第62、北史 巻48... -
祖沖之 南朝に現れた算術の特異点
中華の度量衡について調べていると、南朝の祖沖之についての記載を認めた(丘光明、楊平 「中国古代度量衡史の概説」)。以前の暦に関する記事で見た名前ということもあり、彼の事績をまとめてみた。 円周率隋書律暦志によると、古代では円周率を3とみなしてきた。その状況が変わったのは王莽の新の頃。劉歆が「新莽嘉量」という度量衡の傑作を造り、その銘文中に円面積の算出法も記された。劉歆の円周率は3.1547であったと推算されている。曹魏の劉徽は割円術(円に接する正多角形を用いる)によって円周率の算...
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