五胡とは
五胡とは、一般に下に挙げる5つの異民族を指し、当時を代表する国家の創始者との対応も文献に記されている。
①匈奴:劉淵を始祖とする匈奴漢もしくは前趙
②羯 :石勒を始祖とする後趙
③鮮卑:慕容皝を始祖とする前燕
④氐 :苻洪を始祖とする前秦
⑤羌 :姚萇を始祖とする後秦
上記のように五胡の対象民族がほぼ固定したのは13世紀頃とされる。しかしながら、後述するように五胡だけですべての国家をカバーできない。五胡というのは、あくまで慣用的に使われている数字に過ぎないという理解が必要である。
十六国とは
北魏末の十六国春秋という書籍により、十六国のカウントが定着化した。十六国の内訳は下記の通りである。
①匈奴漢もしくは前趙(匈奴)
②後趙(羯)
③前燕(鮮卑)
④前秦(氐)
⑤後燕(鮮卑)
⑥後秦(羌)
⑦南燕(鮮卑)
⑧夏(匈奴)
⑨前涼(漢族)
⑩成漢もしくは蜀(氐とされるが巴族・賨族・巴氐などとも)
⑪後涼(氐)
⑫西秦(鮮卑)
⑬南涼(鮮卑)
⑭西涼(漢族)
⑮北涼(漢族→盧水胡;匈奴とされるが月氏や混血などとも)
⑯北燕(高句麗→漢族)
実際はどうだったか
当時の状況を説明するうえで、十六国では明らかに足りない。三崎氏の「五胡十六国」で別に記載している国だけでも、下記の7か国ある。
冉魏(漢族)
前仇池(氐)
代(鮮卑)
西燕(鮮卑)
翟魏(丁零)
後仇池(氐)
北魏(鮮卑;華北統一し南北朝に移行するので含めるべきか微妙であるが)
他にも、譙蜀(後蜀:五代十国のそれと区別するため 漢族)・段斉(鮮卑)・吐谷渾(鮮卑;前燕の親戚国だが唐代まで続く)など更に追加を検討すべき国々がある。柔然や夫余といった外部勢力の介入も無視できない。十六国というのは、五胡と同様にあくまで慣用的に使われている数字に過ぎず、少なくとも20を超える国家がそこにあった。
また、国家の内訳から民族を逆算すると、少なくとも従来の五胡に高句麗と漢族を追加して六胡一漢、成漢・北涼・翟魏の扱い次第では最大で九胡一漢が争覇していた時代ということになる。1つの国家に少数民族その他複数の民族を抱えることも当然あったため、五胡というのは全く実態を反映していない数字ということになろう。
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